月見の家

古道具と古材、縁側と床の間のある現代の茶の間暮らし


規模・条件-------------

新築:2022年2月竣工

所在地 :新潟県新潟市秋葉区新津本町

敷地面積:177.86㎡(53.69坪)

延床面積:104.32㎡(31.50坪)

構造規模:木造2階建

用途地域:第一種住居地域

道路幅員:東3.○m

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住宅性能----------

フラット35S-A基準

一次エネルギー消費量等級5

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"和"が好きな若いご家族の住まいです

敷地はご主人が生まれ育ったご実家と目と鼻の先にあり、4mに満たない細い道路が懐かしい日本風情を感じさせます。

外観はお二人の要望もあり、三角屋根の"和"を意識したものになっています。

町並み(周りの家たち)をお手本にしてまとめました。



玄関ポーチ兼テラス

自転車の駐輪や近所の方とのコミュニティ、町内のお祭りのときの観覧席などを目的に大きめなポーチになっています。

「瓦が使えたら嬉しい」という要望を、大きめな屋根にすることで満たすことが出来ました。




玄関

玄関戸はアルミサッシではなく、製作の木製建具としました。

引き違い戸ですが、下足入側を間違って開けないように、開けるほうだけにステップを設けたり、框を追加して分かりやすくしています。

また格子のデザインはクライアントのイメージを取り入れてまとめました。

木製なのでどうしても隙間風が入ってしまいます。なので、玄関を仕切れるようにワーロン紙を太鼓に貼った扉を付けています。




玄関内部

玄関脇には土間収納があります。キッチンにつながる出入口を設け、勝手口のように使います。




居間。簀戸の向こうは中廊下。

テレビなどを置くところは板畳になっています。柱を立てて床の間のようなスペースも設けました。柱は柾目のツガ材で、落ち天井はタモの突き板。




居間踏み込み(入口)

昔に作られた古い道具(建具や欄間、箪笥や照明器具など)を求めて、一緒に時間をかけて探しました。

10点程の古き良きモノたちと出会い迎え入れることが出来ました。

桐箪笥、照明器具、カタイタ硝子、欅の裁ち板、欄間、簀戸、、、

これらを活かすために、周りは控え目にする事を心掛けました。




現代版の縁側

庭につながる居間の掃き出し窓の前は、フローリングを張り下がり壁を付けて、縁側のようなスペースとしました。

居場所を一つ増やすことが目的です。ラウンジチェアを置くもよし、ラグを敷くもよし、使い方はいろいろです。

フローリングと天井は、共にタモ材。




キッチン

キッチンからも庭が眺められます。

吊り戸棚に古いカタイタ硝子を入れました。

白い引き戸の向こうは玄関脇の土間収納。




中廊下と階段室

隙間のある簀戸を利用する為、中廊下も空調エリアになります。階段室との間にもワーロン紙を太鼓に貼った扉を付けています。

白いドアは脱衣室兼物干し、猫扉の付いた茶色のドアはトイレ。お客さんが間違いにくい工夫です。




踊り場

要望のひとつに「楽しい階段」というものがありました。踊り場を広めにとり出隅に窓を付けて、明るい小さな居場所をつくりました。

本棚を設えて読書コーナーとして使います。

床に直接座れるようにカーペットで仕上げたり、階段の踏み板をベンチにしたり、複数人で使えるようになっています。




予備室

踊り場の読書コーナーの隣に、予備室があります。ギャラリーに、勉強部屋に、クローゼットに、、、"楽しい"の可能性が広がります。

折り上げ天井にしたり目透かし巾木にしたり、他の部屋とは少し違った雰囲気にしています。




寝室、クローゼット

主寝室は畳敷きの6帖間。布団を敷いたら寝る部屋になり、布団を上げればセカンドリビングになります。ちょっと面倒ですが、少しの努力で用途と役割を増やすことが出来ます。

窓が付いた壁は、クライアントとそのご家族みなさんで珪藻土を塗りました。(下地処理と最後の仕上げはプロが行いました)「いい思い出ができた」と喜んでいただけたようです。

廊下からもアプローチできるウォークインクローゼットを隣接させています。




居間の開口部

ご夫婦の求める"和"というものを、"明かり"という側面からとらえてみようと考えました。

畳や塗り壁、簀戸や欄間といったカタチ(材料)を使えばOK、というはずではないと思ったからです。"暗さ"は大抵悪者として扱われますが、日本的な落ち着いた雰囲気を感じられるような気もします。

光と影の濃淡や薄明かるさから"和"にアプローチしてみることにしました。


明るい部屋を作ることはそれほど難しいことではないと思います。暗さを考えるほうがうんと難しいことに気付きます。

窓の面積を絞って壁をしっかりと作ることで、窓部分が光って見える、そんなイメージを描きました。

副産物になりますが、窓が小さく(少なく)なれば、耐震性が上がるし、断熱性も有利になります。一石三鳥、うまくいく予感がします。


敷地を最初に見たときから、隣地に建つ二つ建物の隙間から光を上手に取り入れよう、と思っていました。


光と影、窓と壁のバランスを考えているときに、ふとその隙間からの光が「月明かりだったら風情があるなぁ」と思い、調べてみました。月の動きはなかなか難しく正確ではないものの、秋の満月の日の20時頃~21時頃にそこに来ることがわかりました。

これで窓の位置と寸法、障子のデザインを決めることが出来ました。

居間の座卓から中秋の名月が眺められるように考えたのがこの窓です。

障子戸は上げ下げ式になっていて、空だけを眺めることが出来ます。

"日本の明かり"を考えた末に、「月」にたどり着きました。





植栽された緑が根付くと、きっと新しい住まいが古い町並みの波長に合っていくのだと思っています。



設計・本文:渡辺 義行

撮影・編集:佐藤 拓生


工程--------------

相談:2020年8月~

設計期間:2020年11月~2021年8月

工事期間:2021年8月~2022年2月

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