小新の家

竣工:2021年1月


 三方道路の敷地に建つ、三角屋根の三丁目の家


屋根の掛かったポーチは、雨天時や自転車置き場として活躍します。

便利な分玄関が暗くなるので、デザインがシンプルで大きな障子が付けられる勝手口用のドアを採用しています。


花を飾るニッチ。膳板にはナラの無垢材を。

お気に入りの花瓶に季節の花や、素敵な小物が飾られることを楽しみにしています。


自宅での仕事で使うパソコンや複合機、FAXなどを置くために設計した収納家具。

ドアを開けたときに玄関から居間が丸見えにならないように、アイストップの役割も兼ねています。


17.5帖のワンルームのLDK

座ったときに空間の落ち着きがほしいので、飾り棚を兼ねた”小庇下がり天井”を造り、低めの横ラインを強調しています。

南面の窓は、奥まった位置の台所へ南側の光を届けるため、大きなすべり出し窓としました。

板の間に家具やベンチ、照明が置けるように腰壁を設けています。

少し腰高になりそうだったので、杉材の格子を窓枠と一体で作り、重心を下げて落ち着きを。



インテリアグリーンや家族写真などを飾ってもらえるように工夫した収納棚。

構造の柱を面の大きな平角材したのは、この収納棚を据え付け一体に見せるためです。


ケトルやお菓子なども置ける台所カウンターの延長というイメージから、台所と居間の中間に設けました。


「外で軽食をとったり、くつろげるテラスが欲しい」というクライアントの要望から、道路からの緩衝エリアの一部として設けたデッキテラスです。

このウッドデッキは、窓の敷居に合わせて居間の床より一段高くなっています。

外部の遊び場に上がる(高揚感)、居間に下りる(落ち着き)、上下の動きを心の動きに結び付けられたら、、、。


クライアントからは「2階に部屋は要らない」(全てフリースペース!?)というのが最初の要望でした。

そこで将来2部屋+ホールに分けられる様に窓や照明を計画して、約14帖の広間をつくりました。お子さんは3人のため部屋数は足りませんが、子供たちの年齢差と個室が必要になるタイミングを考えて2部屋としています。

廊下よりも天井が高くなっているのは2段ベッドなどに対応する為です。


階段室とホールの間仕切りに障子戸をたててます。

窓のない階段室と廊下にやわらかい光が届くようにと、通風や冷暖房効率も考慮しています。

そして、3帖ほどのホールにはデスクを置いて、読書や仕事の書き物ができるスペースになる予定です。


「寝室はできるだけ道路から離れた位置に」と基本的に考えていますが、三方道路の敷地ではなかなか難しい!?

そこで、規則的な生活スタイルということから、広間からできるだけ距離を取り、東側に配置しました。

下屋への出入口となる低めの窓からじわじわと朝日を取り込み、心地よく一日が始まるように。



デッキテラス


後に行う植栽工事では庭園灯の脇にシンボルツリー、目隠し塀と道路の間には低木と下草を植える予定です。




道路に近い目かくし塀は、柔らかい表情にしたかったため、「木」で作りたいと考えました。コスト(手間)を抑えるため、下地材であるラーチ合板を使っています。耐候性が弱いので、外壁と同じ形状のポリカーボネートで覆っています。

所々開いている小窓は、暮らしのあたたかい灯りを漏らすためのものです。


個性や作意が現れすぎると周囲から浮いてしまいそうだったので、よくある家型の三角屋根としています。それでも、野暮ったくならないように厚合板を300mmほどハネ出し、軒の出をシャープに。また、緩勾配にして外壁面も小さくし、謙虚な立ち姿を意識しました。


庇は対照的に分厚く、存在感を出しています。2階窓の霧除けとしての効果だけではなく、家の顔としてのデザイン的な要素も持たせています。




設計:jinroku

施工:cobo

敷地面積:131.91㎡(39.82坪)

延床面積:99.38㎡(30.00坪)

構造規模:木造2階建

用途地域:第一種中高層住居専用地域

設計期間:2019年10月~2020年8月

工事期間:2020年7月~2021年1月


プロジェクトテーマ


敷地面積39.82坪、延床面積30.00坪に夫婦と3人の子供たちが住まう家です。


・三方(北、東、南)が道路に面した40坪に満たない土地

・既存の住宅街との調和

・「外(庭)での食事やくつろぎを暮らしに取り入れたい」という要望

これらを“どのように成立させるか!?”というのが今回のプロジェクトのテーマ。


人目に付く(目立つ)三方道路の土地であり、長い間月極駐車場だった平坦で開けた場所に建物が建つので、周囲との関係性を考えれば当然道路に面して外壁がそびえたつような計画にはしたくありません。

そこで敷地の南と北を駐車スペース、東を小さなテラスとすることで、全ての道路に対して一歩引いた配置計画にしています。

そして、この街にとって新奇な箱型に見えないよう、屋根は緩勾配(2寸勾配)の切妻屋根を。よくある家型の屋根形状ですが、軒の出や厚み、勾配などシャープで軽やかな印象になるようデザインしました。


東側の目隠し塀は、内側に設けたウッドデッキと居間のプライバシーを確保するためと奥行をつくるためのもの。

行きかう人や、街に対して威圧的にならないよう、塀は道路から760mmほど引いた位置とし、その隙間には低木や下草などを植えます。高さを抑え、やわらかい印象になるよう材料も吟味し、街に緑を提供することで、主張し過ぎない謙虚さを。


外観は、流行や好みで個性を表現するのではなく、既存の街や、その土地の風景への気遣いが大切だと思います。このプロジェクトでは“向こう三軒両隣り”(ここでは正確に言うと、向こう三軒、道を挟んだ両隣+裏のお隣さん)への配慮と、そこにクライアントの個性が少しだけ出せたのではないかな!?と思っています。



~ リビングの家具レイアウト ~



メインルームは畳敷きのリビングとキッチン。



ひとつの空間で様々なくつろぎ方が出来るように、

テーブルとベンチや製作家具、

それに合わせて照明器具も動かせるようにしています。



Ⓐ通常時

円卓はペンダント下、机を兼ねた格子ベンチは任意の場所で




Ⓑ両親や友人が遊びに来た時

格子ベンチを連結させて大きなテーブルに。

少し間を開けて円卓を置けば、大人と子供たちの居場所も分けられます。




🄫ダイニングスペースの追加

壁際にダイニングテーブルを置いて、格子ベンチをチェア替わりに。

子供たちも大きくなったら、イスやソファが置きたくなったら床座とイス座の居場所も。




Ⓓホームパーティー

円卓、格子ベンチテーブル、ダイニングテーブル総動員。

子供たちとママ友パパ友など、大勢で集まったとき用。


広めのリビングは家具レイアウトが自由なので、

変化のある日常がおくれるのではないでしょうか。


※楕円のテーブル、ダイニングテーブルなどは事務所の備品です。

実際には床座で使う大きな円卓が製作されました。