リトルフォレスト

竣工:2021年4月


キャンプ好きのご夫婦のための、外遊びを楽しむテラスのある小さな家 


いつも「樹を2本植えましょう」という話をしています。

1本は街(みんな)の為に道路側に。もう1本は自分たちの為にリビングかダイニングから見えるところに。

緑の魅力はたくさんありますが、、、、

四季が楽しめたり、日々自然を感じられるところ。くつろぎのきっかけが生まれ、くつろぐ場所が出来ること。ご近所さんたちとのコミュニケーション促進剤、建物の人工的固さを薄め建物をやさしく見せてくれる、そして、新しい家と周りの環境との時間差を埋めてくれる、などなど。

このプロジェクトでは、「やがて虫や鳥たちがやってくる小さな森をつくりましょう」という話から始まりました。


建物は、ご夫婦の好みと人柄や場所柄から、出しゃばり過ぎない姿でいこうと早い段階から考えていました。樹々の間からひなびた風情の小屋風の小さな家がうかがえる、そんなイメージを共有しながら、計画は進みました。長く愛されるもの、飽きのこないものは、「日常に溶け込むもの」と考え、見た目の新奇さや面白さとは逆の方向を求めました。

その為にも、一生懸命に作為をしながらも、それが見えないようにというか、アノニマスな雰囲気が現れるように、デザインを引き算するというやり方を心掛けました。この家の完成形は、もっと先にあるのです。


計画当初からの「家だけではなくランドスケープも作ろう」という意識を、強く長く持続させたかったので、プロジェクト名を『リトルフォレスト』としました。

個人の外遊びの愉しみが、街の豊かさにつながることを願っています。


玄関のペンダントライトは、施主さんが手に入れたガラス作家さんの一点モノ。

多くの人の目に留まるよう、この場所に吊るしました。ヤコブセンのスタンドライトと共に、光をともさない日中でも魅力的な玄関になりました。




3間×3間(18帖)の正方形平面のスペースに居間、食堂、台所、そして畳の間が用意されています。そこに、流しを設けた6帖のデッキテラスがつながっています。

各スペースはコンパクトだけれど、お互いの関係性を熟慮し、それぞれに異なった居心地の良さを求めました。居場所がたくさんあると、なんだか贅沢な感じがします⁉


デッキテラスの屋根を2段にしたのは、日差しを調整したかったため。

G.L鋼板で全体を覆うとLDKが暗くなりそうだし、ポリカーボネートで全体を覆うと夏に直射日光が気になるので、2種類の屋根で覆うことにしました。

下屋の高さは建物のプロポーションを大きく左右するので、慎重に考えています。

外を眺めるためのサイズを小さくした透明ガラスのFix窓と、風を入れるためのカタガラスの横すべり窓、役割の違う窓が2つという構成にしました。

サッシの無機質な質感を和らげるために、それぞれに木製の障子戸と網戸を設けました。茶室にもこういった窓があるので、違和感のないものになったと思います。

Fix窓の外には、アジサイとニシキギを植えました。


LDKには主役がたくさんいるため(木がいっぱい)いくつかのパーツは白く塗ったり白いもので作ったりすることで脇役にまわってもらっています。

畳の間の床を1段上げたのは、天井高を調整するためです。3帖と小さなスペースの為、天井高は低く抑えたいし、けれどラワン合板の天井はLDKと連続させたいし・・・・。

両方を成り立たせる為に床が上がりました!?

2階の居室は、夫婦寝室と子供室が2つ。寝室と子供室の1つ(和室)をセットにし、多目的に使える部屋としました。将来、子供室として単独で使用するときには、廊下のドアの位置も変更されます。


物干し場は2Fの南側に設けました。洗濯機と階が違っても、脱衣所~階段~物干し場~WICの距離が近ければ作業はスムーズです。むしろ、乾いたものを仕舞う作業は楽になるはずですし、干すときの眺めは抜群です⁉壁に近い2本のパイプは、シーツやバスタオルなどを干すためのもの。


屋根も外壁も、同じ形状と色の鋼板で仕上げたのは、ひなびた風情を求めたため。昔から見慣れた質素な材料は謙虚で嫌みがなく、親しみやすい雰囲気が生まれます。


鉄板系の外壁は、雨があたった方がキレイな状態を保ちます。雨があたらないところは、時間がたつと白錆が出てきてしまいます。なので、軒の出のない建物には鉄板系の外壁材はうってつけです。この家は屋根が大きく出ているため、雨のあたりにくい妻壁を木のルーバー壁に変えています。

形からではなく、時間から導き出されたデザインです。

道路(他の人)から見えないところにお金を掛けることになってしまったのですが、それがなんだかとても良かったように感じています。

見せびらかさない感じというか、見えないところのオシャレというか、自分たちだけの楽しみのようでとっておき感が増したかなァ、と。

建物にも内面というものがあるんだと思っています。


また、外壁の一部を羽目板張りとしています。材は米松のピーラー、高級な材料です。

小屋風の建物にイイ材料を使うことで落ち着いた雰囲気とか、品の良さを演出しました。

また、クギの選定も大事でした。鉄、ステンレス、真鍮、、、、平頭、丸頭、パネル頭、、、、

真鍮の丸頭を選びました。米松材と共に経年変化を楽しめそうだからです。

道路と敷地に高低差がある場合、多くは道路の高さに合わせて道路面に駐車スペースをつくり、奥に土留めを設置します。ここでは坂道を作り車で敷地に乗り上げ、敷地の中央に駐車することにしました。

坂道は踏まれても大丈夫な草花の種を撒いた砕石敷。土留は、土手や山の法面に使う植生シートを敷き、植物の力で抑えます。道路側の庭には小さな木々をたくさん植えてつくった目隠しが、外(街)と内(家と住人)の緩衝エリアとなり、それぞれにとって良い風景になってくれるようにと考えました。

新築のこの家が、この街に浮かずに、馴染んでくれるようにと願い。

解体時に残してもらった4本の樹が、この街とこの家の時間の差を埋めてくれているようです。



敷地面積:575.87㎡(173.85坪)

延床面積:101.73㎡(30.71坪)

構造規模:木造2階建

建築地 :新潟県新潟市東区津島屋

用途地域:市街化調整区域

設計期間:2020年4月~2020年11月

工事期間:2020年10月~2021年4月


「間」について -人間、空間、時間-

畳の間と居間、食堂との境界はずーっと考えていて、何度も何度も直したところです。

畳の間をどういう存在にしたらいいのか?特別な空間にしたい気持ちもあれば、使い勝手も良くしたい。でも欲張るとぼやけてしまってうまくいかないような気もするし。

居間との関係、台所との関係、食堂との関係・・・・。クライアントに答えを求めれば事は簡単なのですが、ものづくりとして方向性を示さなければなりません。

カタチをいろいろと考えていけば何かが見えてくるかもしれない、と思い作業を進めていきました。

フルオープン、床を上げる、天井を下げる、腰壁を設ける、下がり壁を設ける、格子で仕切る、棚で仕切る、ウッドブラインドを吊るす、それらの組み合わせ・・・・どれもこれもピンときませんでした。

締め切り日をずいぶんと過ぎたころに、一筋の光が⁉

周りと、「つながる個室」「親密な個室」、全体と部分が交錯するような在り方。

壁の大きさや仕上げ方、開口の位置やサイズを慎重に考えました。

「“毎日”も“特別”も受けとめられたら」と考え続けていたせいか、自分の中では「特別な毎日のため」のスペースだと思っています。

記憶の積み重ねの中で、心の拠り所となるような場所になることを願っています。

建築設計ユニット

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