小針の家Ⅲ

3家族が集まって食事を楽しむリビングと庭のある住まい


規模・条件----------

新築:2023年3月竣工

建築地:新潟県新潟市西区小針

敷地面積:123.84㎡(37.38坪)

延床面積:103.93㎡(31.38坪)

構造規模:木造2階建

用途地域:第2種中高層住居専用

道路幅員:南東4.0m

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住宅性能----------

認定長期優良住宅 耐震等級3

BELS取得 (Zeh Oriented)

一次エネルギー消費量等級5

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土地探しからご相談をいただき、奥さんのご実家付近で土地を購入して建てた、ご夫婦+お子さん2人の4人家族の住まいです。


ご両親とご兄弟の3家族が集まって食事をしたいという要望から、人数に応じて家具レイアウト変えられるように計画した約19帖のLDK。南面の掃き出し窓から庭とつながります。



リビング用に新調したテーブルとイスが置かれたところ

共に折りたたんで仕舞うこともできる




LDK

L(リビング)・D(ダイニング)・K(キッチン)、3つの関係性(距離感)は人それぞれ違います。ワンルームのLDKであってもしかりです。

料理をする、食べる、宿題をする、遊ぶ、寛ぐ、、、

人の距離感はいつも大切に考えています。




リビングから見て右奥に配置したキッチン

ダイニング側にコンロ、奥に向かって調理台とシンクという構成です。集中して調理をするには逆のレイアウトがいいのでしょうけれど、「配膳を楽にしたい」、「休日はみんなで料理と食事を楽しみたい」という事から実施設計中に提案し、変更した配置。

コンロ前の開口部を介して緩くリビングとつなげている。




踏み込み

玄関と洗面と階段室への動線になる、ホールのようなスペースをリビングの中に入れて「踏み込み」を設けました。天井を下げて変化をつくり、本棚を置いてリビングから空間を柔らかく区切っている。1.5帖のスペースが、空間に動きと奥行きを与えてくれる。




洗面脱衣室

「朝の身支度を洗面室で出来たら」という要望がありました。

1階の面積を抑える必要(リビングと庭を優先)があるため、全ての収納を担うW.I.Cは難しい、、。そこでオンとオフ、大人用と子供用など1階に収納したい物を整理することで、日常で必要なものの収納スペースを確保できた。

脱衣場には室内干しを設けたので、日常の「洗う-干す-仕舞う」もここでほぼ済ませられる。




主寝室と畳の間

寝室の隣に設けた2帖の畳の間。

コーヒーを飲みながら読書、時には考えごとをしたり、静かな時間が楽しめます。




玄関とポーチ

外のようであり中のようでもある、そんな中間領域として考えました。

ポーチの雰囲気を連続させるため、コートや鞄などを掛ける壁は外壁のように杉板と押縁を横張りに。また、外っぽさと楽しさを感じられる演出として、踏み天井に木製の格子を取り付け、少し天井を高くしている。




小さな敷地の小さな庭

お引渡しから4か月が経過した外観、坊主だった庭木に葉が茂っています


庭の広さは7.5帖程。3帖を植え込みスペースとし、中高木は株立ちのカツラ、低木にヒュウガミズキやシロヤマブキなどを植えました。両隣の庭の緑と連続させて、町に潤いと風情をつくります。

4.5帖と玄関ポーチ(テラス)が活動スペースになり、バーベキューなどを楽しみます。外のスペースは暮らしに彩りを添えてくれ、また町と家庭の緩衝エリアになります。

小さな敷地でも駐車スペースだけでなく、遊べる庭と植込みをつくることができました。 





4m道路の古くからある住宅密集地。

こういう町には何故か温かい人情味を感じてしまうのです。世代の違ういろいろな人たちが共存していると思うからなのか、、、手入れされた庭や鉢植え、窓の開き方などから背後にいる人の存在が感じられるからなのか、、、。それぞれの家たちが自由に振る舞っていても連帯感があるような気がします。


以前ここには赤レンガで作られた門扉と塀を備えた、少し洋風な家が建っていました。その赤レンガがこの通りの雰囲気に一役買っているような感じがしました。


町の新陳代謝を考えたとき、場所の記憶ということを意識しています。

出来れば記憶がリセットされないほうがいいと思っていて、ここでは"赤レンガ"的なモノが有効だろうと考えました。目立ちたいという気持ちの表れではなく、むしろこの場所に馴染ませたいという思いから。

プランが始まった頃からなんとなくそんな話をしていたので、クライアントに改めて提案するとすぐに共感してくれました。庭木がしっかり枝葉を広げた初夏の頃、この色で良かったと喜んでくださっていました。


今はまだ真新しい感じがしますが、数年後には庭の樹々の成長と木部の経年変化も手伝って、この場所にしっかりと根を下ろしてくれると思っています。


設計・本文:渡辺 義行

補佐・撮影:佐藤 拓生



工程---------------

相談~

土地決定:2021年11月~2022年4月

設計期間:2022年4月~2022年11月

工事期間:2022年10月~2023年3月

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