大庇の家
スープの冷めない丁度イイ距離での暮らし
規模・条件----------
新築:2021年10月
建築地:新潟県新潟市江南区元町
敷地面積:137.66㎡(41.55坪)
延床面積:100.70㎡(30.40坪)
構造規模:木造2階建
建築地 :新潟県新潟市江南区元町
用途地域:第一種中高層住居専用地域
道路幅員:東4.0m
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ご主人のご実家の近所、ご夫婦とお子さん2人が住むための家です
当初ご主人のご実家を建て替えて同居という計画でしたが、土地を探しての新築計画となりました。
リビング
大きな円卓をみんなで囲って食事をとるので、この家はリビングがダイニングの役割を兼ねています。
その分リビングの面積が広く取れるので、たくさんの居場所がつくれるように計画しました。
座卓周り、ソファ、窓辺、一人用のイス、カウンター、、、。ただ広い空間があるのではなく、状況や気分に応じて選べる居場所があると、気兼ねなく同じ空間に人が集まれるように思います。
キッチン前のカウンター
軽食や子供たちの宿題など多用途で使うカウンター。脇には書類や文房具などを収納できるようにBOX収納を設けました。最上段は通信回線機器類をまとめて置けるスペースに。笠木の高さを低くすることで、キッチンとの距離感を近づけています。
キッチン
作業の場(K)とくつろぐ場(L)が近いと心理的な距離が重要になるように思います。ここは対面型のキッチンですが、リビングでくつろぐ人とは関係性が薄くなる様に間をずらしたり、柱を利用するなどの配慮をしています。
その柱間に設けたシェルフは来客からのアイストップのためのもの。リビングとキッチンをゆるく仕切る役割に、インテリアグリーンや置時計、キッチン小物を置ける機能を持たせました。
学校からのお便りやメモ書きしたカレンダーなど、大切だけど雑多になりやすいモノを貼るためのニッチは居間から見えにくい場所に。背板が合板なので、気軽に画鋲も使えます。
リビングの窓
道路まで距離が近いメインの窓(東面)はあえてFixとし、光と庭の景色だけを取り込みます。通風用として大きなルーバー窓を採用していますが、サッシの存在感が強いため木製の製作網戸を設けました。この網戸は風だけを取り入れるため、開閉はせず固定していますが、メンテナンス時に外せる様にボールキャッチで取り付けています。下部の小扉はルーバー窓のオペレーターを操作するときに開けるモノ。
小壁と窓下の壁を残しているのも、外部との距離をとりたかったからです。掃き出し窓より守られている感がありませんか?
カーテンは閉めたときの雰囲気を検討し、少し贅沢ですが天井から床までのサイズでリネン素材を選んでもらいました。(ちなみにカーテンにリネンを使うということは、計画の初期段階から考えていました)
リビングのギャラリーコーナー
家族の写真や記念のものを飾ってもらえるよう、少し特別なカウンターを設けました。“お気に入りのモノたち(主役)”が引き立つよう、壁に張った杉板には白ペンキ(+拭き取りで木目は残す)を塗ることで木の存在感を薄めています。
隣接するサッシには格子網戸を取り付け、雰囲気を調整しました。
子供たちが成長してリビングのおもちゃが減ってきたころ、パーソナルチェアなど置いてくつろげる居場所になってくれるといいなぁ♪と
洗面脱衣洗濯室
物干し場としても使えるように、約3.75帖の広さをなんとかつくることができました(汗)。
洗面、洗濯、内干し、外干し、たたむ&アイロン台、収納、、。慌ただしい日常を支えてくれる裏方として機能してくれることと思います。
洗面とつながる脱衣場は、子供たちの成長に合わせてカーテンで仕切ります。小さな収納は、家族分の下着やタオルをしまいます。
物見テラス
(畳+ウッドデッキ+屋根)
寝室の脇には1段上がった1.5帖の小さな畳の間があります。入口の建具は格子網戸としました。その先に設けた屋根上のウッドデッキのテラスと一体的に利用するためです。天井の素材を軒天井と同じ杉材としたのも連続性を生むため。そう、この畳の間は外部空間になるのです。
屋根と壁に守られた、ちょっと贅沢な大人のくつろぎの場です。
「できれば畳のスペースがどこかに設けられたら」というおおらかな要望から生まれた、提案型のアイディアです。
ウォークインクローゼット
家族みんなで使う4.0帖のクローゼットは、寝室からも廊下からも行き来が出来ます。朝の身支度など慌ただしい日常で重宝すると思います。
玄関、ポーチ
屋根の掛かったポーチは約2.5帖大。正面の板塀は目隠しの役割もありますが、あまり閉じすぎずに隙間から朝日や植栽の緑がのぞき、外とゆるやかにつながる事を期待しています。
スツールやベンチを置いて半外の居場所をつくったり、子供たちが小さいうちは自転車や道具の一時置き場。雨や雪の日の外作業の場になったりと、広めのポーチはちょっと贅沢な多目的空間になります。
外観について
東西に長い小さな土地では、建物の形はある程度決まってきます。
敷地的にも予算的にも、四方に大きく軒を出すことは不可能なので、箱型の建物となってきます。
しかし、日々の生活を守ること、建物の劣化、ファサードを整えること等々を考えているうちに“一工夫が欲しい”くなり、箱の東面(正面)に大きな庇を設けることにしました。
このハネ出した庇は
・外壁にあたる雨をしのぎ、建物の劣化を軽減すること
・2階の子供室(しばらくは家族の寝室)の窓が少々の雨なら開けておけること
・畳の間とデッキテラスには、外に居ながら屋根と壁に守られている半外空間を演出する
という役割を持っています。また、デザイン的には
・建物に凹凸ができるので陰影が生まれて奥行きが出来ること。
・庇の横ラインが建物の背を低く見せ、プロポーション良く、控えめな立ち姿になってくれること。
・庇に守られている部分に木を使いやすくすること(窓の木枠や羽目板)
どうせならと、雨樋も隠せる高さと位置を狙ってみました。必要な機能から出来上がったデザインは流行に流されにくく、長く愛されるために重要なことと思います。
ちなみに、その他3面は軒の出がない事と、ほとんど見えないことを考えて、耐久性が良く、コストの低いガルバリウム鋼板を採用し、メンテナンス性とコストパフォーマンスの両立を図りました。
工程---------------
設計期間:2020年10月~2021年5月
工事期間:2021年5月~2021年10月
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既存の住宅街(幅員4mの袋小路)にできた3区画分譲の真ん中、約41坪の小さな敷地。突き当たりの用水路を挟んだ奥には、数年前のミニ分譲地があり、新旧の建物が入り混じるロケーションでの計画です。
クライアントとは資金計画から予算を共有しつつ、土地も一緒に探して決めました。しかし建築に目を向けるとプランに制約を受けるため、積極的にオススメできる土地ではありません。ですが、この用水路の側道を抜け道を使うとご実家まで徒歩約1分。見えすぎることも離れ過ぎることもない絶妙な位置関係は、きっとプラスの要素に働くであろうというのはここに決めた大きな理由にもなっています。そしてそれがそのままタイトルの由縁でもあります。
そして生まれ育った町で家を建てる訳なので、隣近所や町並みについても考慮しつつ佇まいは謙虚さも感じる落ち着いた印象に。でも、じわじわと認識できる、滲み出る程度の程良い存在感を出せたのではないかと思っています。
日々の“楽しい” や “忙しい”を少しだけサポートしてくれる名脇役的な普通の家が、日常の土台となり、付きすぎず、離れすぎない自然な家族の暮らしの支えになってくれることを願っています。
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